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2002.12.26作成

[1038] パーキンソン病における歩行困難

原文●http://www.parkinson.org/walking.htm
著者●Alireza Minagar MD, Abraham Lieberman MD

パーキンソン病の症状

パーキンソン病の主な症状は、動作緩慢と寡動、躯幹四肢(胴体・両腕・両脚)の固縮、振戦、歩行困難および姿勢保持(バランス)障害だ。
歩行困難と姿勢保持障害は最も重い機能障害だ。
歩行困難はバランスが良い状態で起きることもあり、また悪い状態で起きることもある。
脳の中で歩行をつかさどる部分とバランス感覚をつかさどる部分は離れており、そのためにこのようなことが起きる。
もし歩行困難と姿勢保持障害が同時に起きると歩行困難は重症になる。

歩行困難

パーキンソン病の場合、歩行困難は病歴の初期にも後期にも起きる。
歩行困難を経験する人は、多くの場合、歩幅が小さく前に出した片方の足のかかとが反対の足のつま先より後ろにある。
時には、小股歩行と走りが一緒になり、前方突進や、まれにではあるが、後方突進が起きる。
小股歩行は脚の動きの遅さと脚の動きの欠如の結果だ。

歩行困難は片手または両手の振りの欠如によることもある。
腕の振りはバランスの維持を助け、足を前進させる補助をする。
腕の振りの欠如は腕の固縮および(または)協調動作の欠如に原因する。
協調動作というのは、足を動かすときには同時に腕を振るというように脳にプログラムされることを言う。
このような働きがパーキンソン病では失われることがある。
小股歩行と腕の振りの欠如は、小股歩行だけの場合より歩行困難を悪化させる。

[クスリ] 小股歩行と腕の振りの欠如は普通メネシット(レボドパ/カルビドパ)ビ・シフロールとペルマックスのような持続時間の長いドーパミン・アゴニストに反応する。

前傾姿勢

パーキンソン病患者の中には前傾姿勢をとる人がいる。
中には前傾姿勢の結果、歩行時に腰から上が著しく前に傾いているため視線が真下に向き床しか見えない状態で歩いている場合がある。

前傾姿勢の原因は以下のいずれか。

(1) 重心が前に行っている場合
(2) 背骨より前にある筋肉が恒常的に背骨の後ろの筋肉よりもいびつに強い力で引っ張られている場合

前傾姿勢自体が歩行困難を招く。

背骨は支柱であり、それを取り巻く腰、太もも、殿部の筋肉が歩行に必要な力を生み出す。
もし、背骨が曲がり、または前傾すると、腰、太もも、殿部の筋肉は力を失う。
これを立証するには以下を試すとよい。
(1) 立って、まずまっすぐ先に視線を向け、徐々に上半身を前傾させ、視線が床に向かい床しか見えなくなるまで、腰を曲げる。
(2) その姿勢のまま歩いてみる。
腰、太もも、殿部に力が入らず、どうしても小股で歩かざるを得なくなるだろう。

[クスリ] 前傾姿勢は部分的にはメネシットおよび(または)やビ・シフロールとペルマックスのような持続時間の長いドーパミン・アゴニストにより改善されるだろう。

前傾姿勢は、それぞれの人にあった体操を毎日することによっても治療できる。

体操の内容は次のようなものだ。

(1) 手を高く上げ鉄棒をつかみ、ゆっくりぶら下がるが、足は床につけたままにする。
この方法で背骨の筋肉を伸ばす。
この体操は一度に10回これを繰り返し、日に2回以上行う。
最初は理学療法士の指導下で行うこと。
(2) 立って、腕を背中に回し右手で左手首をつかみ、下にひっぱる。
この運動で、肩が上がり背骨がまっすぐになる。
一度に20回以上を日に3回以上繰り返し合計60回行う。
(3) 自転車こぎマシンに座り、毎日ゆっくり15分こぐ。
その間、目の高さより上にある絵かテレビに視線を固定する。
これによって肩があがり背骨がまっすぐになる。

杖、歩行器、ウォーキングステッキ

 もしあなたが杖か歩行器をを使っており、杖が短すぎたり、歩行器のハンドルバーが低かったりすると、腰が曲がり、小股歩行になる。
その結果杖や歩行器の利点より腰が曲がるという欠点のほうが大きいことになる。

もし杖が必要なら、ウォーキングステッキを使うといい。

ウォーキングステッキは肩ほどの高さで、持つと、肩、ひじ、手が一直線になる。
これにより、肩が上がり、背骨がまっすぐになる。
モーゼは120歳でウォーキングステッキを使い、エジプトからシナイ、ヨルダンを経てパレスチナまで歩いたのだ。
普通の杖ではとてもこうはいかなかっただろう。

注意すべきことは、ウォーキングステッキは誰にでも合うわけではなく、中には杖のほうがバランスがいい人もいる。
歩行によくてもバランスがとりにくければ意味がない。
どちらが自分に適しているか判断するには、理学療法士の指導のもと、両方を試してみる。

もし歩行器を使うなら、

前かがみにならないように十分背の高い歩行器をえらぶことだ。
高さが十分かどうか調べるには、スーパーに行ってショッピングカートを使って歩いてみる。
カートのハンドルは高いので、背を伸ばして歩かざるを得ない。
歩行器よりカートのほうが歩きやすいと感じるようなら、歩行器はあなたに合っていない。
(1) 歩行器が低すぎるかもしれない。
(2) 歩行器の車輪が小さすぎるかもしれない。小さければ小さいほど押すのに力が要り、エネルギーを使うことになりあなたは疲れやすくなる。
(3) 歩行器は頑丈ではないかもしれない。スーパーのカートはとても頑丈だ。

Freezing(すくみ)

すくみには"start hesitation"とよばれる「歩き始めることができないもの」あるいは、画面がフリーズするコンピュータ異常のように、"stop hesitation"とよばれる「突然歩き続けることができなくなるもの」とがある。
歩き始めることができない"start hesitation"は、歩き続けることができなくなる"stop hesitation"とは別に起きることも、両方起きることもあるようだ。

すくみ(Freezing)のこの二つのタイプは脳の中の別な回路か経路と関係しているらしい。

[クスリ] 歩き始められない"start hesitation"は通常、メネシットビ・シフロールとペルマックスのような持続時間の長いドーパミン・アゴニストに反応する。
突然歩き続けることができなくなる"stop hesitation"にはメネシットあるいはドーパミン・アゴニスト は効果があることも効果がないこともあるようだ。

歩き続けることができなくなる「すくみ」は通常、PD患者が方向転換したりドアに近づくときや人ごみの中で起きる。

どうしてPD患者がすくむのかはわからない。
脳は私たちの歩幅の長さを"見て"いるという理論がある。
人は起伏のある地面と平らな地面、閉ざされた空間と開かれた空間とでは異なる歩幅の長さで歩く。
いったん平らな地面を歩き始めると脳は自動操縦に入り、私たちが見るものに応じて一歩は自動的に次の一歩につながり、それぞれの歩幅はだいたい同じである。
私たちが障害物すなわち地面の穴、他の人、戸口に遭遇すると、そのとき歩幅を変えなければならない。
PD患者は自動操縦から他のプログラムに切り替えることができず、欠陥のあるコンピュータのようにフリーズする(すくむ)。
ドアに近づくときや方向転換するときのように、歩幅を変えることを考えただけですくんでしまう患者もいる。

不安感とすくみ

不安感はすくみを増大させる。
不安を感じている患者はより頻繁に、より長い間すくむことになる。
パーキンソン病の患者が一度すくむと、その不安感は大きくなりさらにすくみやすくなる。
中にはすくむと、まるで不安発作のように汗をかき心臓の鼓動が速くなり、息が荒くなる人がいる。
不安感をなくすことですくむのが減る人もいる。

不安感を取り除く方法には、つぎのものがある。

(1) カウンセリング------なぜ不安になるかを理解するよう努める。

(2) すくみをひき起こす環境と状況を確認してそれを避ける。

(3) 呼吸訓練(breathing exercises)のようなリラックスするテクニック

(4) Zoloft のようなセロトニン再取り込み阻害薬SSRIを含む薬物療法

[クスリ] SSRIエスエスアールアイ (Selective Serotonin Reuptake Inhibitorの略称。) 選択的セロトニン再取り込み阻害薬ともいわれる。
うつ病および強迫性障害の治療薬(→ 抗うつ薬)として、1983年より欧米諸国で発売されている。

Zoloft(商品名)
最近開発された選択的セロトニン再取り込み阻害薬で抗うつ作用以外の作用(強迫性障害、パニック障害などに対する効果)も期待される。
この薬の内服以前2週間、MAO(モノアミン酸化酵素)阻害薬 を内服してはいけない。

よくすくむPD患者は、歩き始めや、すくんだあと再び歩き出すための様々な「コツ」がわかるようになる。
その「コツ」とは
「床の上にラインを想像してまたぐこと」、「 深呼吸を数回すること」、 「すくみが「解除されるまで待つこと」
などだ。
ほとんどの「コツ」は背筋をまっすぐに伸ばすことに関係していて、それによって腰、太もも、殿部の筋肉からもっと力が出るようになる。
すくんだ時に2回に1回はすくみを打開できる「コツ」がわかれば、患者の不安は減っていく。

すくみと日内変動

パーキンソン病患者でメネシットを服用している人は、日内変動つまり「ON」の時と「OFF」の時がある。
そして、「ON」のときにすくむ場合と、「OFF」のときにすくむ場合がある。
「OFF」のときにすくむ場合は、普通、 メネシット持続時間の長いビ・シフロールミラペックスやペルマックスの服用量を増やすことにより軽快する。
「ON」のときのすくみは、薬の増量に反応する場合としない場合がある。
このことから、すくみにはいろいろな種類があり、脳の中のいろいろな回路や経路か関係していることが示唆される。
脳深部刺激術(DBS)はいくつかの種類のすくみには有効だが、すべてに効くというわけではない。
繰り返していうが、脳内のいくつかの回路と経路がすくみに関係しているのだ。

「歩行困難:パーキンソン病以外の原因?」は省略します。
訳●あーもんど&はとぽっぽ

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