2001.08.01 デザイン変更

[1009] 常染色体性劣性遺伝性若年性パーキンソニズム(AR-JP)について

特徴常染色体性劣性遺伝形式からのまとめ鑑別を要する疾患

 パーキンソン病(中年以降に発症する)は一般に遺伝的な要素は少なく、いろいろな環境要因、性格、生活習慣などが組み合わさって発症の原因となっているといわれています。

 一方で、40歳以前に発症する若年性パーキンソニズムの中には、両親のいとこ婚があったり、同胞発症(兄弟姉妹がパーキンソン病)があったりするケースがあり、パーキンソン病とは多少異なった性格を持つグループとして位置づけられています。

 若年発症のうちかなりの症例がこのAR-JPに属するものと思われます。

パーキンソン病とパーキンソニズムの違いについては以下の記事など参照のこと。

特徴

1.日本からの報告が多く、日本の国内での地域差はない。
  最近は外国からの報告も増えてきている。

2.常染色体性劣性の遺伝形式をとる。
  87%に近親婚(大部分はいとこ婚)または同胞発症がある。

3.平均発症年齢は20歳代半ば(27歳くらい)。
  20代〜30代に多く、報告では9〜43歳にわたっている。

4.男性よりも女性にやや多く、日本では男:女=1:3.5

5.初発症状は歩行障害のことが多く、振戦で初発することはむしろ少ない。
  パーキンソン病の若年性発症では振戦が初発であることが多いのと対照的である。

6.振戦は静止時の粗大なものではなく、姿勢時の微細なものが多い。
  パーキンソン病の場合には安静時に粗大な振戦がみられる。

7.固縮、無動はあまりひどくない。

8.姿勢保持障害(後方突進現象)が目立つことが多く、かなり特徴的な症状である。
  発症後数年経つとすくみ足も出現することが多い。

9.足にジストニーが見られることが多く、足の変形がみられ、歩行障害の原因となることもある。

10.睡眠により症状の改善がみられ(睡眠効果)、朝起きた後症状が軽く、時間が経つにつれて症状がひどくなる。昼寝のあとも同様の効果がみられる。

11.L−DOPAが劇的に良く効き、中年以降に発症するパーキンソン病に比べて一般にL−DOPAの使用量は少なくてすむ。

12.L−DOPAなど抗パーキンソン薬の使用によりジスキネジア(不随意運動)が現れやすい。
  服薬が長くなると、クスリの効果の持続時間が短くなり(ウェアリング・オフ)、症状の日内変動が激しくなってくる。 これらの症状をを防ぐために多剤を併用することが多い。

13.自律神経症状は軽く、便秘と発汗過多がみられることがあるが、起立性低血圧や排尿障害は少ない。

14.痴呆になることはないといわれており、抗パーキンソン薬による精神症状もあらわれることは少ない。

15.進行はゆっくりで、治療している患者では30年以上経ってもヤール重症度は3〜4であり、発病から数十年間自立生活が送れる。

16. その他
  女性で生理前後の症状悪化がみられることがある。
  また妊娠中や出産後の発症が多い。
  喫煙により症状の改善がみられることがある(喫煙効果)。

17.最近、第6染色体にパーキン遺伝子の存在が確認され、遺伝子診断が可能になった。
  将来的には遺伝子治療をふくめて、新たな治療法の展開が大いに期待される。

常染色体性劣性遺伝形式からのまとめ

  *病気の遺伝子を持ってはいるが発症しない人を保因者といいます

AR−JPの患者の親
 双方が保因者です。(いとこ婚でなくても偶然ふたりとも保因者であることがあります

AR−JPの患者の兄弟
 発症する確率1/4、保因者である確率1/2、正常である確率1/4

AR−JPの患者の子−−患者の配偶者が保因者でない
 子は全員保因者になります

AR−JPの患者の子−−患者の配偶者が保因者である
 発症する確率1/2、保因者となる確率 1/2

鑑別を要する疾患

パーキンソン病の若年発症
症状がよく似ている。家系内に発症がみられない場合には、遺伝子診断が頼りとなる。

常染色体性優性型パーキンソニズム
40歳以上での発症が多いが、若年で発症することもある。

遺伝性進行性ジストニー(瀬川病)
常染色体性優性遺伝をする。10歳未満の発病が多い。

びまん性Lewy小体病

多系統萎縮症

参考文献  古川芳明ほか:若年発症Parkinson病. 神経内科、41:213−223,1994
山村安弘ほか:日内変動を呈する常染色体劣性若年発症パーキンソニズム.神経内科、41:231−238,1994
原稿担当●よしこ

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