2001.09.06 更新
医療関係へ

[1002] 再生医療(幹細胞移植)について

1. 幹細胞

幹細胞は、組織や臓器に成長する元となる細胞である。幹細胞はほとんどの臓器や組織中に存在している。造血幹細胞や神経幹細胞など様々の幹細胞の中で、ほとんど、どの種類の組織にでも分化することができ、増殖能力も高いことから、万能細胞と呼ばれるのが、ES細胞(Embryonic Stem Cell:胚性幹細胞)だ。

ES細胞は、ヒトでは受精後5〜7日程度、マウスでは3〜4日程度経過した初期胚(受精卵)から作られる細胞で、1998年に、アメリカの研究者によって、ヒトのES細胞の培養に成功したことが発表された。

ES細胞は、様々な細胞へ分化する能力と高い増殖能力を持つので、失われた細胞を再生して補うという新しい治療法(再生医療)への応用が期待される。
パーキンソン病、心筋梗塞、脊椎損傷、白血病、糖尿病、肝臓病、など様々な病気の治療への応用が期待されている。

現在、世界各国でES細胞の研究が進められており、わが国においても、

 京都大学再生医科学研究所の笹井芳樹教授と協和発酵工業などの研究グループがマウスの胚性幹細胞から、神経伝達物質であるドーパミンを効率よくつくる方法を開発したと発表した。」(2000年10月26日付読売新聞) とのことである。

  笹井教授によれば、すでに、特許出願済みで『成立すれば極めて基本的な特許になる。3年以内の人体への応用も可能だ。』という。(2000年10月26日付読売新聞)

2. 間葉系幹細胞

最近になって、骨髄の中にある間葉系幹細胞が,ES細胞に近い能力を秘めていることが分かってきた。
間葉系幹細胞は、骨、軟骨、脂肪、心臓、神経、肝臓の細胞などになることが確認され、「第二の万能細胞」として注目を浴びている。

 骨髄に含まれ、骨のもとになる『骨芽細胞』(間葉系細胞が骨の細胞に変わる途上の細胞)から、再生の難しい神経細胞をほぼ100パーセントの高効率で作り出すことに,慶応大学医学部病理学教室の研究グループが、マウスを使った実験で世界で初めて成功した。 (2001年2月2日付読売新聞)

 目的の細胞に成長させる技術が確立出来れば,臨床応用は5年程度で始まる可能性が高いと見ている。(2001年2月26日付日本経済新聞)とのことである。

この方法では,患者自身の骨髄を使うため,拒絶反応の心配がなく,ヒトの受精卵を使うES細胞のような倫理的な問題もない。

 3. 指針案の策定

 これらの動きを受けて、我が国では、研究や臨床試験を行う際の指針作りが進められている。ES細胞については文部科学省が基礎研究に限定して、指針案を策定中である。
指針案では、基本的には,ES細胞の研究を推進することとするが、ES細胞は,不妊治療の際に生じる使用されなかった受精卵(余剰胚)から作るため、生命倫理の観点から、厳格な規制の枠組みが作られている。また,  厚生労働省では,大学や医療機関が、幹細胞(ES細胞を含めた幹細胞全体)を利用した臨床試験を行う際の指針を作るため,近く有識者による専門委員会を設置するとのことである。(2001年2月26日付日本経済新聞)

 最近のパーキンソン病に対する治療法のひとつとして幹細胞移植などの移植治療が注目を浴びているが倫理的な問題など避けてとおれない問題もある。そこで将来的に、より大きな可能性をもった治療として遺伝子治療の応用が注目されるようになってきた。
 数多くの神経変性疾患のなかでもパーキンソン病は遺伝子治療に適している代表的疾患とみなされており、今後の進歩が期待されている。

海外でも、ES細胞の研究が進められている

イギリスでは

ヒトの胚性幹細胞をのは、受精後14日以内の人の胚から移植用の臓器や組織を作る研究で、政府機関による監督を義務付ける条件がついている。
利用して臓器や組織を作り,病気の治療に用いる研究を認める法律が,今年1月に成立した。 法律によって認められた人のクローン化の研究は認められない。
上院では、英国国教会やカトリックなど宗教関係者を中心に、倫理的な問題から、慎重論を唱える人も多く、結果、クローン胚研究のあり方についての特別委員会を上院に設けることで合意し、法案が可決に至った。

英高級紙「ガーディアン」によるとその最初の治療ターゲットになるのは、パーキンソン病などの脳神経系の病気とのことである。
Bioindustry Assosiation のサイモンベスト氏は、「パーキンソン病患者への試験的な治療は3年後には始まる」と考えており「これがうまくいけば今後7年のうちに、小規模ながらも商業利用が始まる可能性がある」としている。

アメリカでは

  
new 09.06更新

2001年1月に就任したブッシュ大統領は、8月に、就任以来懸案となっていた「ES細胞についての研究」に、限定的ながら、連邦政府予算を支出することを承認すると発表した。ES細胞は、受精卵から作られるため、生命倫理の観点から、ブッシュ大統領の支持基盤である宗教団体や人工中絶反対団体が、ES細胞の研究に反対していた一方、難病患者団体などは、研究に対する支援を強く要望していた。
 大統領の発表によれば、現時点で、すでに、60を超えるES細胞株が存在するので、それらを用いて行われる研究に対しては助成するが、今後新たに受精卵から作られるES細胞を使った研究は助成しないとのことであり、ES細胞の研究に対する賛成派と反対派の中庸を得ようとしたものである。
 8月末に、国立衛生研究所(NIH)によって、64の現存するES細胞株のリストが公開されたが、外国に存在する細胞株も含まれており、科学者にとっての入手可能性の問題などをめぐって議論が続いている。

原稿担当●ハトポッポ

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